この記事では、家具・インテリアの知識を深めたい方に向けて、キッチン背面収納の基本から、種類、おしゃれで機能的な活用アイデア、そして後悔しないための選び方のコツまで、包括的に解説していきます。あなただけの理想的なキッチン作りへの第一歩として、ぜひ参考にしてください。
キッチン背面収納とは?〜キッチン空間を変える影の主役〜
定義と役割
キッチン背面収納とは、文字通りキッチンの背面、つまりシステムキッチン本体(シンクやコンロがある側)と対面する壁側に設置される収納家具やスペースのことを指します。食器棚(カップボード)やカウンター、キャビネット、棚などがこれに該当します。
その主な役割は以下の通りです。
- 収納力の向上: 食器、調理器具、キッチン家電、食材ストックなど、キッチン周りにあふれがちなアイテムを効率的に収納します。
- 作業スペースの確保: カウンタータイプの背面収納は、配膳前の準備や、コーヒーメーカー、トースターなどを置くサブの作業スペースとして活用できます。
- 空間の演出: デザインや素材を選ぶことで、キッチンのインテリアスタイルを決定づけ、空間全体の雰囲気を向上させます。
- 生活感の整理: 扉付きの収納を選べば、雑多に見えがちなものを隠し、すっきりとした印象を保つことができます。
なぜ背面収納が重要なのか
キッチン背面収納は、単に収納量を増やすだけでなく、キッチン全体の使い勝手と快適性を向上させるために不可欠です。
● 効率的な動線の確保: 調理中に必要なものがすぐ手に取れる場所に配置することで、無駄な動きが減り、作業効率が格段にアップします。
● 空間の有効活用: 限られたキッチンスペースを最大限に活用し、収納不足によるストレスを解消します。
● 美観の向上: デザイン性の高い背面収納は、キッチンをより洗練された、居心地の良い空間へと変貌させます。
● 安全性: 床や作業台の上に物が散乱するのを防ぎ、安全な調理環境を維持します。
このように、キッチン背面収納は、機能性、デザイン性、安全性のすべてにおいて、理想のキッチン作りを支える重要な存在なのです。
キッチン背面収納の種類〜ニーズに合わせた最適な選択〜
キッチン背面収納には様々なタイプがあり、それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なります。ご自身のキッチンの広さ、収納したい物の量、使い方に合わせて最適なものを選びましょう。
カウンタータイプ
腰高程度の高さのカウンターと、その下に引き出しや扉付きの収納スペースを備えたタイプです。
● メリット:
○ カウンター上を作業スペースや家電置き場として広く使える。
○ 圧迫感が少なく、比較的コンパクトなキッチンにも導入しやすい。
○ 上に窓があっても設置しやすい。
● デメリット:
○ 上部の空間が空くため、トータルの収納量は他のタイプに比べてやや少なくなる傾向がある。
○ 壁面への飾り付けや、別途吊り戸棚などを検討する必要がある場合がある。
カップボードタイプ(食器棚タイプ)
床から天井近くまで、あるいはカウンタータイプの上に吊り戸棚などが組み合わさった、一体型の収納ユニットです。
● メリット:
○ 収納量が非常に多い。食器、家電、食品ストックなどをまとめて収納できる。
○ デザインに統一感があり、キッチン全体がすっきりとまとまる。
○ 「隠す収納」に適しており、生活感を抑えやすい。
● デメリット:
○ サイズが大きいため、圧迫感が出やすい。特に狭いキッチンでは慎重な検討が必要。
○ 価格が比較的高くなる傾向がある。
ハイカウンタータイプ
通常のカウンタータイプよりも天板の位置が高いタイプです。システムキッチンのワークトップ(作業台)の高さ(一般的に85cm〜90cm程度)に合わせることが多いです。
● メリット:
○ カウンター上の家電(電子レンジなど)が使いやすい高さになる。
○ システムキッチンと高さを揃えることで、空間に一体感が生まれる。
○ 下部収納の容量をカウンタータイプより大きく取れる場合がある。
● デメリット:
○ 小柄な方にはカウンターが高すぎると感じられる場合がある。
○ カウンター上での細かな作業には不向きな場合がある。
オープンシェルフタイプ
扉がなく、棚板が露出しているタイプです。壁面に直接棚板を取り付ける場合や、フレーム構造のシェルフユニットなどがあります。
● メリット:
○ 収納物が見やすく、取り出しやすい。
○ お気に入りの食器や雑貨を「見せる収納」として楽しめる。
○ 視線が抜けるため、空間に広がりを感じさせやすい。
○ 比較的安価に導入できる場合が多い。
● デメリット:
○ ホコリが溜まりやすく、こまめな掃除が必要。
○ 収納物が丸見えになるため、整理整頓を常に意識する必要がある。
○ 生活感が出やすい。
造作(オーダーメイド)タイプ
キッチンのスペースや形状、手持ちのアイテムに合わせて、設計・製作される完全オーダーメイドの収納です。
● メリット:
○ スペースを無駄なく最大限に活用できる。
○ デザイン、素材、機能などを自由に組み合わせ、理想通りの収納を実現できる。
○ 梁(はり)や柱があるなど、特殊な形状のスペースにも対応しやすい。
● デメリット:
○ 既製品に比べてコストが高くなる。
○ 設計から設置までに時間がかかる。
○ プランニングに専門的な知識が必要となる場合がある。
組み合わせタイプ
上記の各タイプを複数組み合わせる方法です。例えば、カウンタータイプにオープンシェルフを組み合わせたり、一部をカップボードにして残りをカウンターにするなど、自由な発想で構成できます。
● メリット:
○ それぞれのタイプの良い点を組み合わせ、機能性とデザイン性を両立しやすい。
○ ライフスタイルの変化に合わせて、後から棚を追加するなど、柔軟に対応できる場合がある。
● デメリット:
○ 組み合わせ方によっては、デザイン的な統一感を出すのが難しい場合がある。
○ 全体のバランスを考えた、慎重なプランニングが必要。
キッチン背面収納のおしゃれ&機能的アイデア集
キッチン背面収納をさらに魅力的に、そして使いやすくするためのアイデアをご紹介します。
「見せる収納」と「隠す収納」のベストバランス
全てを隠してしまうと無機質な印象になりがちですし、全てを見せると雑然としてしまう可能性があります。オープンシェルフやガラス扉の一部にはお気に入りの食器やデザイン性の高いキッチンツール、グリーンなどを飾り(見せる収納)、使用頻度の低いものや生活感の出やすいものは扉付きのキャビネットにしまう(隠す収納)ことで、メリハリのあるおしゃれな空間を演出できます。
作業スペースとしての活用
カウンタータイプの背面収納は、絶好のサブ作業スペースになります。
● 配膳スペース: 出来上がった料理を一時的に置く場所に。
● 家電スペース: コーヒーメーカー、電気ケトル、トースターなどをまとめて配置し、カフェコーナーのように使う。
● 軽食・朝食スペース: スツールを置けば、簡単な食事をとるカウンターとしても利用できます。
家電配置の最適化
電子レンジ、炊飯器、オーブントースター、電気ポットなど、キッチン家電は数も多く、置き場所に困りがちです。
● 使用頻度と動線を考慮: 毎日使う炊飯器や電子レンジは、使いやすい高さ(腰高〜目線の高さ)に配置します。
● コンセントの位置と数: 事前に必要なコンセントの数と位置を確認し、配置計画を立てましょう。家電用の専用回路があると安心です。
● 放熱スペースの確保: 電子レンジやオーブンなどは、側面や背面に放熱のためのスペースが必要です。設置場所に十分な空間があるか確認しましょう。スライド棚などを活用するのも有効です。
● 蒸気対策: 炊飯器や電気ポットなど、蒸気が出る家電を置く場合は、上部の棚板に蒸気対策(モイス加工など)が施されているか確認するか、蒸気を逃がせるスペースを確保しましょう。
素材と色で空間を演出
背面収納の素材や色は、キッチンの印象を大きく左右します。
● システムキッチンとの調和: システムキッチン本体の色や素材と合わせると、統一感のある洗練された空間になります。
● アクセントとしての活用: あえて異なる色や素材(例えば、木目調やステンレス、アクセントカラーなど)を取り入れることで、空間に個性をプラスできます。
● 素材の特性を活かす:
○ 木製: 温かみのあるナチュラルな雰囲気に。
○ メラミン化粧板: 色柄が豊富で、耐久性・清掃性に優れる。
○ ステンレス: スタイリッシュでモダンな印象。プロの厨房のような雰囲気に。
○ タイル: カウンターの天板や壁面に使えば、デザインのアクセントになり、耐水性・耐熱性も高まります。
照明計画で魅力をプラス
照明を効果的に使うことで、背面収納の魅力と機能性をさらに高めることができます。
● 手元灯(ダウンライト・ライン照明): カウンターでの作業や、収納内部を照らすのに役立ちます。特に吊り戸棚の下に設置すると効果的です。
● 間接照明: オープンシェルフの奥や、キャビネットの上部などに仕込むことで、空間に奥行きとムードが生まれます。
● スポットライト: 「見せる収納」で飾っているアイテムを照らし、ギャラリーのような雰囲気を演出します。
ゴミ箱スペースの確保
意外と置き場所に困るのがゴミ箱です。背面収納の一部をゴミ箱スペースとして計画すると、キッチン全体がすっきりと片付きます。キャスター付きのワゴンタイプや、扉で隠せるタイプなど、様々な方法があります。分別が必要な場合は、それに合わせたスペースを確保しましょう。
後悔しない!キッチン背面収納選びのコツと注意点
デザインや機能性だけで選んでしまうと、「思ったより使いにくい」「スペースが足りなかった」といった後悔につながることも。以下の点をしっかり確認しましょう。
動線とスペースの確認
● 通路幅: システムキッチンと背面収納の間の通路幅は、最低でも80cm〜90cm、できれば100cm〜120cm程度確保するのが理想です。人が一人通るだけでなく、かがんだり、二人で作業したり、引き出しを開け閉めしたりすることを考慮しましょう。
● 扉や引き出しの開閉スペース: 扉を開けたとき、引き出しを最大限引き出したときに、通路や他の家具、壁などに干渉しないか確認が必要です。特に開き戸の場合は注意が必要です。
収納量の見積もりと計画
● 何をどれだけ収納したいか: 現在持っている食器、調理器具、家電、食品ストックなどをリストアップし、必要な収納量を把握します。将来的に増える可能性も考慮に入れましょう。
● 収納物のサイズ: 大きな鍋や高さのあるボトル、奥行きのあるホットプレートなど、収納したい物のサイズを測り、それに合った棚の高さや奥行きがあるか確認します。可動棚があると便利です。
● どこに何を収納するかシミュレーション: 日々の使い方を想像しながら、どこに何を置くと最も効率的か考えてみましょう。
家電サイズと配置場所の事前確認
● 家電の正確な寸法: 特に電子レンジやオーブンは、本体サイズだけでなく、設置に必要な放熱スペース(左右、背面、上部)を含めた寸法を確認することが重要です。
● コンセントの位置と容量: 使用したい家電の数と消費電力を考え、必要なコンセントの位置と数を計画します。場合によっては電気工事が必要になることもあります。
素材選びのポイント(耐久性・清掃性)
● 耐水性・耐汚性: キッチンは水や油が飛び散りやすい場所です。汚れが付きにくく、拭き取りやすい素材(メラミン化粧板、ステンレス、ホーローなど)を選ぶと、お手入れが楽になります。
● 耐熱性: カウンターに熱い鍋を一時的に置く可能性がある場合や、家電の熱が影響する可能性がある場所には、耐熱性の高い素材(タイル、人工大理石、ステンレスなど)を選ぶと安心です。
● 耐久性: 長く使うものなので、傷がつきにくく、歪みや反りが出にくい丈夫な素材を選びましょう。
設置場所の環境(湿度・日当たり)
● 湿度: 湿気がこもりやすいキッチンの場合、カビの発生しにくい素材を選んだり、通気性を考慮した設計(例:背板に通気孔がある、足元が少し浮いているデザインなど)を選ぶと良いでしょう。
● 日当たり: 窓の近くなど、直射日光が当たる場所に設置する場合、色褪せや素材の劣化(特に天然木など)が起こりにくいか確認しましょう。
予算の設定と優先順位付け
● 予算の明確化: キッチン背面収納にかけられる予算をあらかじめ決めておきましょう。造作にするか既製品にするか、素材や機能によって価格は大きく変動します。
● 優先順位: 収納量、デザイン、機能性、素材、価格など、何を最も重視するか優先順位をつけ、予算内で最適な選択ができるように検討しましょう。全てを完璧に満たすのは難しい場合もあるため、妥協点を見つけることも大切です。
まとめ
キッチン背面収納は、キッチンの収納力を高めるだけでなく、作業効率、デザイン性、そして日々の暮らしの快適性を大きく向上させる可能性を秘めています。
カウンタータイプ、カップボードタイプ、オープンシェルフなど、様々な種類の中から、ご自身のライフスタイルやキッチンスペースに合ったものを選ぶことが重要です。そして、「見せる収納」と「隠す収納」のバランス、家電の配置、素材選び、動線の確保といった細かな点まで計画することで、失敗や後悔を防ぐことができます。